狂愛ゴング
「でも、澄は好きなんじゃないの?」
泰子の言葉に吸ったジュースは盛大に——……。
「ぶっっはあ!」
「ぎゃー澄! 汚い!!」
「あんたが……きっもち悪いこというからでしょー!!」
口から吹き出されたオレンジジュースが私と泰子の机をオレンジ色にそめて、ぼたぼたと床に落ちる。
ああ、まだ飲んでないのに。
食道まで通っていたのも一緒に吐き出されたじゃないか。
泰子は、間一髪で自分のお弁当を死守したらしく、お弁当を持ち上げて机の上を「あーあ」と言いたげに見つめる。
ポケットからハンカチと、友達に借りたティッシュで取りあえず机の上からオレンジジュースを取り覗き、床のジュースを上履きでぎゅぎゅっとこすりつける。
「あーもう……私のオレンジジュースー。泰子が変なこと言うからー……」
もう箱の中にはちゃぷちゃぷと残りわずかなオレンジジュースが音を立てる。
私の食後のデザートなのに! 毎日これを楽しみに生きているのに!
「まだ全然飲んでないのに! あほ!」
「わかったわよー! もうしつこいなあーほら! 100円!」
文句を言う私を見かねて、泰子が財布から100円を取り出して私に差し出してくれる。
待ってましたと言わんばかりにそれを受け取った。
やほーい!
ジュースジュース!
「買ってくるー!」
まるで子どもみたいだ。
自分で思うけれどもそんなこと気にしてられない。
喉が渇くんだから仕方ないじゃない。
今月は漫画を買いすぎて金欠なのよ。けれどオレンジジュースがないなんて考えられない。
学校以外で手に入らないのだからなおさらだ。
大好きなオレンジジュースを買いにスキップで渡り廊下の自販機の前に向かった。