あたしの仮旦那は兄貴の親友
マンションを出たところで
美雪さんと出くわした

白いワンピースがよく似合う美雪さんが
あたしにお辞儀をする

あたしも目礼をすると足を止めた

「別れたの?」

美雪さんが口を開く

「はい、今は」

「そう…」

美雪さんが口元を緩ませた

「あたしと美雪さんは
同じ土俵の上にあがったばかりです
美雪さんが久我先生を好きな気持ちはわかります
でもあたしも久我先生が好きですから」

あたしはにこっと会釈をしてから
美雪さんの横を通り過ぎた

すたすたと歩き進めてから
一度足を止めて振り返った

美雪さんは白いワンピースの裾を翻しながら
マンションのエントランスに入っていくのが見えた

同じ土俵にあがったばかり
あたしは正々堂々と戦いますよ

あなたのように
卑怯な女にはなりたくない

だから久我先生にも
あの日の出来事を言ってない

あたしのお腹を何度も蹴り
流産に追いやったのは美雪さんだと…

あたしは言わなかった


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