あたしの仮旦那は兄貴の親友
「最初に言っておく
あたしは産むつもりはない

だからあんたが責任を取らなくちゃ
…とかって考えるな

だからあたしは一人で病院に行く
学生でも簡単に堕ろせる病院を探して

探して…」

あいつがぐっと肩を掴んできた

微かに煙草のツンとした臭いがした

ここに来る前に
吸ってきたのかな

「果恋ちゃん、産まないの?」

「ああ、産まない」

「どうして?」

「産まないからだ」

「それじゃ理由になってないよ」

「きちんとした理由だろ」

「僕にわかるように言ってよ」

「だから産みたくないから産まない」

「じゃあ、産んで」

「はあ? だから…
あたしの話を聞いていたのか?」

「ん、ちゃんと聞いてる」

聞いてないだろうが!

あたしは産まないと言ったんだ
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