あたしの仮旦那は兄貴の親友
ビシャっという音と
鼻から入ってくる水で
あたしは目を覚ました

薄暗い倉庫のようなところに
あたしがいるようだ

「果恋さん、起きてちょうだい」

憎しみの籠った
女の声にあたしは目を見開いた

目の前には
綺麗だとずっと思っていたあいつの元カノが
安売りで売ってそうな生地の薄い服を着ていた

「えっと…美雪さん?」

「そうよ、覚えていてくださってありがとう」

にっこりと笑う笑みの裏には
あたしを恨んでいると言わんばかりの感情をが隠れている

「こ、こんなところで何をしてるんですか?」

「そうねえ…何をしているように見える?」

「わからないから、聞いているんです」

「だいたい察しはついてるんじゃない?」

あたしはごくっと唾を飲み込んだ

「久我先生と別れるように強迫でもするつもりですか?」

「ご名答。強迫するだけじゃ意味がないから
もうちょっと踏み込もうっか」

「はい?」

「貴方を脅すネタを作るの
それとそのネタを誠也に見せて
貴方と別れたいって思うように仕向けるの
どう? なかなかなアイディアだと思わない?」

「さあ、どうでしょうか?
スマートなやり方でないことは確かですけど」

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