あたしの仮旦那は兄貴の親友
辛いんだ

どうしてこんなことになってしまったんだ

道聞きに応じなければ良かった

急いでいるからって断って
帰ってしまえば良かった

迎えに行くって言ってくれたあいつの好意に甘えていれば良かった

そしたら帰り道で一人にならなかったのに

後悔ばかりがあたしの身体を襲う

美容院に行かなければ良かった

自分で髪をセットすれば良かったんだ

そうすれば外には出なくて…
声をかけられなかったはずだ

もうイヤだ

何も考えたくない

考えたくないのに
考えちゃうんだ

身体が覚えている

腹を蹴られる感覚が残っている

太ももに滴り落ちてくる血の生温かさが
まだ残っている

声が枯れるまで叫んだ

もう蹴らないでって何度もお願いしたのに

誰も止めてくれなかった
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