あたしの仮旦那は兄貴の親友
ちゅ、ちゅっと
あいつがキッチンに立つあたしの首筋に
キスをする音が響いた

「ちょ…久我っち! 夕飯が作れないよ」

「果恋…『久我っち』って呼ばないで
下の名前で呼んでよ」

「どうして?」

「呼んだら、果恋から離れてあげるよ」

「なんだよ、それ」

ぎゅうっとあいつが
背後から抱きしめてくる

「いいから、呼んで」

「誠也…」

「ん」と満足そうに頷いたあいつが
約束通り
すっとあたしから離れる

流産してから
あいつはあたしにべったりだ

いつも
何をするんでも
あたしの近くに居る

家の中で
ずっと一緒に居ても意味がない気がするが

不安…なのだろうか?

まだ自分を責め続けているのだろうか?

あのことに触れないけど
きっと誰にやられたか…とか知りたいだろうっとかて思う

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