パステルクレヨン


「そんなの…玉置がそれまでだった、ってことだよ。気持ちにムラがある人とは付き合いたくないもん」



「あーまた贅沢言ってー。人生なんてさ、妥協しなきゃダメなんだから。誰だって大金持ちのイケメンと結婚したいよ、でもそんなのになれるのは一握り。


なれたとしても、裏の苦労に堪えられなくて挫折するのがその半分。


自分が死ぬ前に旦那が死んだ、あるいは不慮の事故で幸せを失った、あるいは自分が人生を満喫する前に死んでしまった人、さらに半分。


だからみんな妥協して生きるんじゃん。理想を待ってるだけじゃ、王子様が迎えに来る前にこっちがのたれ死んじゃうよ」



熱く語ったヒロコは、一息でここまで話すと、勢いよくジュースをすすった。


「つまり……どういうこと?」



「だーかーらー。杏樹も玉置が無理なら他の男にしなって。黙ってりゃ告白してくる男なんて、あんたにはたくさんいるでしょ」






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