銭コ乗せ
試験開始
「好きなのを選べ。」

重みのあるボスの声が、館内に響く。テーブルにやや大きめな布袋が四つ、ずらっと並べられると、
四人の男達は戸惑いながらも慌てて手近なものをとった。

「その中には小銭が入っている。その袋の中味を、きっちり1万円にしてこい。期限は一週間。ただし、必ず中の金を使うこと。中の金が関わることのない金は認められない。また仲間内でのやり取りは禁止する。わかったな。」

「使うというのは?どこまでが使う、に入るんですか?」

「貨幣としてでも物としてでも使うは使う、だ。」

「では…」

「これ以上は言わせるな。俺がルールだ。それだけは言っておく。」

ドスの聞いた声で周囲を縮み上がらせると、さらにボスは威圧をかけてきた。

「お前らは常に見張られている。くれぐれも変なまねはしないことだな。」

―ぐっ―

「一つだけ、いいでしょうか。」

「なんだ?」

「もし1万円に出来なかったら?」

「組織に入る資格のないものは…始末するだろうな。」

―ぐっ―

「一万円にして帰ってきたら、組織に入れてやる。安心しろ、ここで言ったことは必ず守ってやる。お前らが屋敷を出た瞬間、この試験は開始とする。」
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