銭コ乗せ
「俺は見張りの顔を知らないし、むやみに接触しようとするのは危険だと思った。それならボス、あんたしかいない。狙いをあんたに決めた理由は、他にもあるがな。まあ、それはいい。
ともかく、俺が交渉する相手はボス、あんたと決めた。
しかし、ただ交渉だなんて言っても、門前払いになるのがオチだ。」

「では、なぜ勝負か。それは俺自身にもわからないが、ボスに熱意を見せなければと思った。熱意を見せれば、わずかながら勝算があるように、安易に思っちまったわけだ。」

「ボスが勝負を受けるかどうか。まずはそこが難関だった。一歩間違えれば死ぬことは間違いなかったが…」

「それでもボスは勝負を受けてくれた。このことには本当に感謝している。」


「それで?」

俺はおだてたつもりだったのだが、ボスは眉一つ動かさずに続きを急かした。

「そ…それで、いざ勝負をしようにも、何をしていいのかわからなかった。あんたが言ったように、俺には博打の才能なんて、まったくないからな。」


「では、なんでポーカーなんぞを選んだ。」

沸き出た疑問を、またボスは俺にぶつけた。当然、眉一つ動かさず。
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