銭コ乗せ
ボスの説明が終わり、屋敷の廊下を歩くと俺は門の前で立ち止まった。

ここを出た瞬間、試験が始まる。

他のヤツラのうち、二人は早々に出ていってしまったが、何も焦って出ていくことはない。出た瞬間試験が始まる。逆にいえば出なければ、試験は始まらない。さすがに長居はマズいと思うが、しばらく作戦を考えてからでも遅くはないだろう。

よし、まずは中味を見てみるか。

そう思って袋を開けようとした時、

「待て。」

後ろから呼び止める声に振り向くと、男が立っていた。

こいつも試験を受けるうちの一人だ。

説明の時は俺の隣りに座っていた。キツネみたいな眼をした、いけすかねぇヤツ。

「まだ中味は見ない方がいい。」

「中味くらい、見てもいいだろ?」

キツネ眼は俺の言葉を聞くと、ため息をついて両手を広げた。

仕草もムカつく野郎だ。
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