銭コ乗せ

おっさん

―ピーン―


―パシッ―

七日目。
湖畔に立ち膝して座り込んでいた俺は、

未だに十円から進めずにいた。

たった十円で何が出来るってんだ?

物も買えず、増やす方法も思いつかなかった俺が、ここ一週間でやることといえば、ただただ、ただただ、

コイントスだけだった。

―ピーン―

―パシッ―

今ではすっかりそれがクセみたいになっていた。弾いた十円玉は、意識せずとも地面に垂直に真直ぐ上がり、余裕綽々で片手で取れる。

―ピーン―

―パシッ―

「こんなことが出来たからといって、なんにもならねーじゃねぇか…」

あと、数時間もすれば俺はボスに始末される。

不甲斐ない。

俺はボスの期待に応えられなかった。


落とし前をつけよう。

わざわざボスの手を煩わせる必要はない。

これ以上、ボスの顔を汚すわけにはいかない。

覚悟を決めると、俺は立ち上がり、湖に近付いていった。
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