銭コ乗せ
「あっ…」

ザバッと立ち上がった俺を、おっさんは不思議な目で見た。

「どうしたんですか?」


貨幣としてでも物としてでも…


使うは使う。


「あの…あの?」


このおっさんはあの十円の表が出たために、


助かった。


つまり、俺はおっさんを助ける際に、


あの十円を使った…!


だから、もし、おっさんから謝礼金をもらえば…




それには袋の十円玉が…




関わっているはずだ!


「おっさん!!その、次っ!次のことなんだが…」

固唾を飲んだ俺を、なぜかといわず真剣に、おっさんは見上げた。

「一万、いや9990円…俺に…くれないか?頼む…!…いいか?」


きょとんとするおっさん。


が、しかし、

「はい。もちろんいいですよ!」

そう言って笑顔がこぼれた。

「よし。」

俺は思わず両拳をグッと握った。
それに合わせてお湯がパシャリと音をたてた。


こうして俺は、袋の中味をきっちり一万円にすることに


成功した。


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