銭コ乗せ
「何やってんだてめぇら!」

僕の声に気付いても、拾う手を止める人間はいない。むしろそのスピードはいっそう強まるばかりだ。

「やめろぉぉー!」

僕は近くの一人を蹴りあげた。

「ぐわぁっ!」

下品な声色で、ソイツがゴムまりのように転がる。

「やめろって言ってんのが…わからねぇのかぁぁおぉー!!??」

もう一度凄みを聞かせると、バカどもの手がようやく止まった。

「よーし、掻き集めた小銭をこっちに持ってこい…そして、すぐに消えろ。」

しかし、浮浪者のショボくれた何対もの目は、じーっと僕を見たままで、まったく動かない。

「何してやがる…早くしろォォバカどもがぁぁー!!」


微動だにしない。


「け、拳銃なんか…」

「あん?」

「拳銃なんかぁ怖くねぇぞ!」

「なん…だと…?」

バカめ…!
拳銃なんか…もう持ってなんかいない。もしも仮に持っていたって、こんなバカどもにわざわざ使う必要もない。

何人集まったって、

バカはバカだ…

「そうだそうだー!」

「怖くなんかねぇぞぉ!」

一人が勢いよく飛び掛かってきた。

すかさず僕は返り討ちを浴びせてやった。
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