銭コ乗せ

馬鹿

僕にはもう何も残ってはいなかった。

破れた無様な布袋。その中には、

たったの一円すら入ってはいなかった。

9999円。あとたった一円で済んだ話が、


今やもうゼロだ。

たったの一円も、ない。

脱力してフラフラと彷徨う僕は、

もう、開き直るしかなかった。

こうなったらさっさと殺してくれ。

追っ手でも、アイツでも、あの占いのババアでも、誰が来たってびくつきはしない。

さあ、さっさと、殺しにくるんだ。

大通りのベンチに座ると、僕はただひたすらにその時が来るのを待った。

しかし、一時間二時間と時を重ねても、その時が来ることはなかった。辺りが夜へと変わり、夕焼けが本当にゼロを刻んだ時、ようやく僕は、こちらに向いている視線を感じることが出来た。

やっと来たか。

生殺しなんてものは頼むからやめてくれ。

さあ、早く。

早く…

目を閉じて僕は、相手の接近を許した。すると、

―ザッ―

―ザッ―

近付いて来る気配がはっきりと感じられる。

―ザッ―

僕のすぐ近くで足音が止まり、そして僕は肩を叩かれた。

いよいよか。

覚悟して目を見開く。

しかし、

そこには僕の想像とは少々違った光景が広がっていた。
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