銭コ乗せ
そこには、ガキがいた。小学校中学年辺りの、女のガキだ。
そのガキが何かを握り締めて立っている。


まさかこのガキが…


僕に引導を渡すのか…?


「オジサン。」

ガキが恐る恐る口を開いた。

「これ、落とし物。」

そう言って差し出してきた、手の平には、

100円が三枚、10円が一枚、1円が二枚。

312円の小銭が包まれていた。

覚悟していた僕は、すっかり拍子抜けした。

「さすがに子供に殺されるなんてないか。」

そう呟くと、思わずククッと笑ってしまった。それを見て、ガキは目を丸くする。

そして、僕はようやく思い出した。

コイツ、あの時悲鳴をあげたガキだ…。
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