銭コ乗せ
あのガキには、あの状況はものすごいトラウマになるに違いない。

にもかかわらず、

あのガキは、僕を探し、わざわざ小銭を届けにきた。

いったい、何のために?

わけがわからない。

そして僕は、なんでガキなんかに


気を遣った?

なによりなんで、



施しをした?


小銭さえ受け取れば、わずかでも助かる道はあったかもしれないのに。

まったくもって、わけがわからなかった。

見れば鼻水を垂らした、いかにもバカそうなガキだ。

しかし、皮肉にもそんなバカガキが、


僕が初めて、落ち着いて話せる相手だった。

僕はそれを実感していた。


やがて、ヒドい疲れを感じ始め、僕はそのまま眠りに落ちていった。
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