銭コ乗せ
あんパンを食べながら、また大通りまで戻ってくると、いくらか人が賑わい始めていた。
体は幾分、動きを取り戻してきたが、腹の方は全然足りない。一昨日の夜から、何も食べてない。残念ながらあんパンだけでは、満たすことが出来なかった。

「おや?あんた!」

へろへろと歩く僕の耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。

「どうだい?一万円は出来たかい?」

占いのババアがさも結果を知ってるような口振りで、訪ねてきた。

「あんたの…思ってる通りだよ。」

口論する気力もなく、僕は道端に座り込んだ。

「まあ、いい経験になったじゃないか。」

そう言ってあっはっはとババアは笑った。

「どこがいい経験なんだか。僕はそのおかげで、あと数日以内には殺される立場になってしまった…」

物騒な話にババアは一瞬ドキっとしたが、すぐさま僕を皮肉った。

「おやおや、あたしを殺すなんて言ってたのに、今度はあんたが殺される?まったく、なっさけないねぇ。」

今や、ムカつく気力すらない。

「もういい。ほっといてくれ。僕の周りにいたら…あんただって危険だぞ。」
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