僕の幽霊

「まぁ今はまだ『悠莉さん』って言うよ。慣れてきたら、また、そのうちに。」

わたしの焦りを感じたのかな。

「…謙汰は、こんな風にいつも幽霊に話し掛けてるの？」

「いや、別にいっつもそんな事してる訳じゃないさ。何て言うか、相性みたいのもあるし？『波長が合う』ってゆーかな。」

「波長？？…ふ〜ん」

…わたしとは、その波長とか相性とかが合ったって事なの…？

「波長が合っても、受け入れないタイプの人は、こっちの声は耳に入らないから、無理。」

「それに、俺も話してみたい人にしか、声かけないさ。…なんて言うと、ナンパみたいだな。」

謙汰の目は笑いながらも、どこか真剣な眼差しで、やっぱり力がある。…霊感ある人ってこんな目つきしてるのかな。なんか、とって喰われそうな感じっていうのかな、何でも見透かしてそうな感じがする。…ヒヤヒヤ、ドキドキしてしまう。


「…さてと…」

謙汰が両腕をあげて伸びをした。
しゃがんでた私は、自分がすごく小さく感じて、立ち上がった。
それでも、彼の肩先くらいにやっと頭が届くくらい。背も高くて圧倒される。

「じゃあ、明日また来るから、悠莉さん。これくらいの時間帯ならいいかな。」

「え…？あ…うん…」

明日も来るの？何でだろう。

「悠莉さん、どこか行きたい所ない？そうだ、高校行ってみる？」

「え…高校？」

「久しぶりに高校行くのも、気晴らしになるんじゃないかな。明日、一緒に行こう。」

笑顔で言う。本当、友達を誘うみたいに、普通に言うから、かえって戸惑ってしまう。

「じゃあ、悠莉さん、また明日。」

「バイバイ…」

振り返って、街灯の並ぶ道を歩いて行く。

背中を見つめながら、ふと溜め息が出た。

本当に久しぶりに生身の人間と話をしたんだ。
そんな事、もう起こらないのかなって思ってたのに、こうもあっさりと普通に…。
終始向こうのペースだったけど。
明日も来るって、何でなんだろう。強い人に会った事ないから、わからないよ。
やっぱり、いつかは、とって喰われちゃうのかな…様子みて、油断させて、太らせて(？)食べちゃう、みたいな。

…嫌だな。そんな簡単にこの世から消えてしまうのは嫌だな。

でも、どうしたらいいんだろう。