雨粒ドロップ

「…おいバカサワ。確かに見た目は餓鬼だけど…油断したら


…死ぬぞ」


脩人は今まで見たことが無い程の真剣な表情で、光を放つフライ返しを構えた。

「…脩人。こいつ何者?」

愛璃は突然現れた男…というか餓鬼に目を白黒させて言う。
そして、それ以上に、真剣な顔してフライ返しを持つ脩人にも疑問を抱いていた。

「…バカサワ。雛連れて外に出てろ」

脩人は餓鬼から視線を逸らさずに愛璃に言う。
そして言い終わるやいなや、約1メートルの距離のあるテーブルに向かって大きく飛んだ。



「え、あ、ちょっと!」

…何がなんだか分からないが、とにかく危険を感じた愛璃は、泣きじゃくる雛の手を引いて、ドアの方へ向かった。



「…逃がさない」

餓鬼は右手を大きくドアの方へ向かって振る。
すると…


バターン!

「はぶべっ!」



大きな音と共にドアが閉まった。
そしてタイミングよく愛璃はそのドアに顔面から激突した。

「愛璃?!」

雛は倒れた愛璃を抱き起こす。

「いたーい!…あンの糞餓鬼がァ!」



…くっくっと笑みを漏らす餓鬼に、脩人はフライ返しを向ける


「お前、一体ここに何しに来たんだ?」


餓鬼はニヤリと笑うと呟いた。

「姫を迎えに来たのさ」



そう言うと餓鬼は右手を脩人に向けた。
脩人はそれに気付いてフライ返しを構え、守りの体制。


「つまり、…お前らに用はない」

そう言う餓鬼の手から、かまいたちの様に鋭い風が吹きだした。


「…っ!」

脩人の構えるフライ返の青い光が強くなり、盾の様にその風をさえぎる。が、しかし!
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