舞蝶.・。*


「うん。だけどあたし泣けないんだ...。
泣きたくないんじゃなくて・・・
泣き方を知らない・・・だからどんなに辛い事があっても。
どんなに悲しい事があっても・・・泣けない」

勇樹はそこまで聞くと、優しく微笑んだ・・・
「莢。泣いていいんだよ?莢はね。泣けないんじゃない。
泣いてしまう自分を怖がってるんだよ・・・。泣いたら、止まらなくなりそうで怖いんだよ・・・。でも。莢は大丈夫。莢を泣きやませてくれる人達がいるじゃん。だから・・・大丈夫。泣いていいんだよ」

勇樹の優しい顔が。勇樹の言葉があたしの心の奥に入り込んでくる

気づいたらあたし・・・
頬に温かいものが伝わってたんだ・・・

勇樹は優しい顔で微笑んで「おいで」と言って、そして優しく抱きしめてくれた。
あたしは、たくさんたくさん泣いた・・・

勇樹はあたしが泣きやむまで、抱きしめて頭を撫でてくれた

気づいたら、あたしは勇樹の温かい胸で眠ってしまった



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