桜の季節
「ちょっと……!」
慌てる私。
だって、こんな事された事ないんだもん。
好きでもないのに、胸の鼓動が早くなる。
さっきよりも、抱きしめる力を強くして、直樹は言った。
「茜………。ちょっとでいいから……このままでいさせて…。」
耳のすぐ近くで、囁くように、言う直樹。
今でもドキドキしてるのに、さらに鼓動が早くなる。
静かで、私達しかいない保健室。
野球部や陸上部が練習している声も聞こえる。
寝ていた間に、放課後になってたみたいだ。
でも今は、そんな事考えている暇はない。
直樹……、なんでそんな事したの?