桜の季節
直樹は、私の足音で、顔をあげた。
ベンチから素早く立ち上がり、こっちに走ってきたかと思うと、
直樹の香りで包まれた。
強い力で私を抱きしめる。
「……んな…。」
直樹が口を開く。
「…何?」
「……ごめんな…。」
「なんで謝るの?」
「泣かせて……ごめんな…。」
直樹の優しさに胸が、ぎゅっと、痛くなった。
私は、そっと、直樹の背中に手を回した。
直樹の、抱きしめる力が強くなる。
「返事……教えて?」
「……本当は気付いているくせに…。」
「茜の口から聞きたい。」
直樹は、そう言うと、私をはなして、目を見つめてきた。
「……あの…ね…」
恥ずかしくて、目をそらしてから言った。
「……す…好き…。」
「誰の事?」
「もうっ!知ってるでしょ!?」
「ゆって?」
「直樹の事………好き…。」