私はこの宙を何よりも尊いものだと信じます。
来てるだけで暖かい。
「多架寒くないか??」
俺は多架に問いかける。
「んー、ちょっと寒いかな。」
多架の手を掴んでみると氷のように冷たい。手の色は妙に青ざめている。
俺はそっとダウンコートを脱いだ。
「ほらっ、これ着とけ!」
「いいよっ!!コレ私きたら宗樹風邪引いちゃうもん」
多架は必死に否定してくる。
「俺が嫌だ。お前風邪引く方が…」
「んじゃあ、一緒に入ろう!!そうすれば宗樹も暖かいね」
可愛いこと言ってくれる。
「はいっ、半分こ!!」
隣では小太郎が羨ましそうにこっちを見つめる。
俺は小太郎に向かって笑った。
そんな事を続けている俺達…
ある日、多架が顔を赤くして散歩に来た。
「今日顔赤くね??風邪でも引いた??」
「ううん、大丈夫」
俺はその一瞬を見逃さなかった、やっぱり鼻声…。
多架のおでこに自分のおでこを当ててみた。
どちらかと言うと体温が高い多架だけど、明らかにいつもより熱い。
「お前、熱あんじゃん!!帰んなきゃダメだろ?」
多架は涙目ながら俺に言う。
「ヤダ…。宗樹と居る。」
必死に言う多架に何も言えなくなっていつもみたいにダウンコートをかけてやった。
「肩貸すからよっかかっていいよ。」
「ありがとう。」
頭を俺の肩に乗せて楽になる多架に安心したと思ったのもつかの間、
今日は喋んないなと思っていたら、俺に体重をかけて寝ていた。
起こすのも悪いケド、これ以上風邪ひどくしちゃだめだと思って起こすことにした。
「多架起きろ!!寝たら風邪ひどくなるぞ」
「んー…宗樹眠い~…。」
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