なみだ

「あの‥、天海さん‥」


意を決して、
僕は真剣な眼差しで
真っ直ぐに彼女を
見つめた。


「‥なんですか?」


突然の僕の行動に、
彼女は不思議そうに
首を傾げた。


「あ‥あの‥、その‥」


彼女の澄んだ瞳に
真っ直ぐに見つめられ、
今まで頭の中のキャンバスに書き留めていた言葉たちが、一瞬で白い絵の具に塗り潰された。

もはや、僕の頭の中に
何の言葉もなかった。


「‥瀬良さん?」


心配そうに呼ぶ彼女の声に僕は必死で言葉を探した。

そして…


「こ‥今度、バスケの試合があるんだ‥」


僕の口から出た言葉は
それだった。

必死で探して
やっと出てきた言葉…。

今の僕には
それが限界だった。
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