初恋の向こう側

シャワーを済ませ居間へ行くと、母さんと真央が隣の和室で楽しそうにしていた。

畳の上に広げているのは古いアルバム。

台所に立って牛乳を飲んでいると、母さんが言った。


「梓真、あんたもちょっと来て見なさいよ」

「うーん」


一応返事は返したが、昔の写真を眺めながら皆で笑い合うなんてさ、俺まで一緒にそんなことしたら相当気持ち悪いだろ? 


「ほらっ、ちょっと来て見なさいって。

あら、これも懐かしい~。あっ これは熱海旅行の時のよね……。
もうっ 梓真、早く!」


……ったく。

あんまりうるさいから、仕方なく行ってみる。


「ほら、懐かしいでしょ?」

「そうかもね」


俺の気のない言い方に、不満そうに母と妹が顔を見合わせた。

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