初恋の向こう側
「なぁ、今何処にいんの?」
「家だけど」
「部活は?」
「休みだけど。それで何?」
このまま電話で済ませるのは、流石にマズいと思った。
「ちょっと会って話できないかな?
その、土曜のこと謝りたいし……」
「そっ。じゃあ家に来れば? 鍵開いてるからそのまま入ってよ」
電話は切れた。
居間の方を振り返ると、母さんと真央がまだアルバムを眺めていた。
心の中でちょっと気合いを入れる。
そして外へ出た。
ヒロの家の玄関までは数十メートルしかない。
でもこのコースを歩くのは、かなり久しぶりだと思った。
昔からヒロが俺ん家へ来るのがほとんどで、その逆のパターンってほとんどなかったから。