初恋の向こう側
別にそんなわけじゃないけど、なにも拳まで握らなくても……。
「アズマもさ、そうやって余裕こいてるとヤバいよ?」
「ヤバいって何が?」
「だから、ボーっとしてたら可愛い子はどんどん他の男にとられちゃうぜ? ってことだよ」
飽きる程聞かされてる話題に、ちょっとゲンナリって顔で言ってやる。
「最近のオサの話、そればっか」
すると、目線を下半身にちらりと落としたオサ。
「だって、早く捨てたいじゃん?」
しかも不気味に笑っていやがる。
「……そのためだけかよ?」
溜め息混じりに返すと、前のめりになって力説された。
「ちげーよっ! そりゃあ俺だって恋がしたいさ。あぁしたいとも。
でももう俺らだって高校生だよ? マジでヤバいって」
ヤバいというのはつまり、いつまでも男の貞操を守ってても仕方ないじゃん? って意味。
それには同感だけどさ。でも気づけば高校生になってたわけで。