初恋の向こう側
それからテスト前週間に入って、オサとその彼女の愛莉が俺ん家に来ていた。
こうやって三人でテスト勉強するのが恒例になっている。
「梓真はどうすんの?」
英語のノートを写していたオサが顔を上げた。
「何が?」
「だから、クリスマスの予定だよ」
また ”クリスマス” かよ?
『どうすんの?』って言われても、どうもしないけどって思っていたら、
「オサムって、そういうとこ女子みたいよね?」
窓から外を眺めていた愛莉が口を出した。
振り向いたその反動で、肩の辺りで真っ直ぐに切り揃えられた黒髪が揺れる。
「クリスマス、クリスマスって浮かれ過ぎじゃない?
どうしても誰かと過ごさなきゃいけない訳でもないのに、他人のことまでお節介よ。
そんなことより……まだノート写してないの? 早く返してよね!」
愛莉が意志の強そうな眉をしかめてオサを睨みつけると
「ごめん! すぐ終わるからっ」
なんて慌てたオサ。
あーあ、すっかり尻に敷かれちゃってさ。