初恋の向こう側
「幼なじみっていうと、やっぱり初恋の相手だったりするの?」
愛莉の不意打ちにギクリとした。
「えっ?
な、なんだよ、急にっ !?」
しかもちょっと焦っちゃったし、こんな反応したら怪しまれそうだよな……。
そんなことを思って平静を装った。
「別に、そんなんじゃなかった、けど……」
”そんなんじゃなかった”
嘘は言ってない。
『初恋の相手か?』って訊かれても、正直よくわかんないんだ。
あの頃の俺はまだ幼くて、そんな気持ちを抱いてヒロを見ていたかなんてさ。
ただ一緒にいるのが楽しくて、いつもヒロの後を追いかけてた。
もうちょっと成長すると、周りに冷やかされるのが嫌でわざと素っ気ない態度を取ったこともあったけど。
それでもすぐに俺達は、それまでもそうだったように、笑い合いじゃれあった。
恋心の存在を意識したことなんてない。
一緒にいるのが当たり前だったんだ。