初恋の向こう側



テスト最終科目の終業チャイムが鳴ると、安堵の溜め息が教室のあちこちから漏れた。

冬休みまで一週間だ。

席に座ったまま両腕を上げて伸びをした。


「アズマー!」


不意に名前を呼ばれて振り向くと、こっちを見て手招きをしてるヒロが、教室の入口に立っていた。

その姿を見て顔を歪めた俺。

だってさ、小首を傾げてよそ行きの笑顔を向けるヒロにメチャ違和感を感じたから。

絶対、なんか企んでるだろ……。


「何?」

「ねぇ 梓真、今日バイトは?」

「休みだけど……何で?」


そこでヒロがニヤリと笑ったのを俺は見逃さなかった。

もうブリッ子なんかじゃない、いつものズルい顔で。


「じゃあ、帰り付き合ってよ?」

「……何処に?」

「いいから!」


それだけ言ってヒロは、自分の教室へ戻っていった。

ったく、何であんな強引なんだろな。ホント昔から変わってないよ……。



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