初恋の向こう側
* * *
今年の夏にオープンしたこのカフェは、特に若いカップルに人気らしい。
九月に来た時は満席で入れなかった俺達だけど、今日は中庭を眺められる最高の席に座ることができた。
「ちょっと、あたしとデートしてるんだから、もっと楽しそうな顔しなさいよ?」
「だって、まだ眠いんだよ……ふわぁ~」
なんて隠しもせず欠伸をしたら、ヒロにジロって睨まれた。
冬休み二日目。
今日はバイトも休みだっていうのに、俺は文字通り ”叩き” 起こされた。
「起きろーっ!
埋め合わせし直すって言ってたでしょー!?」
爆睡中の俺の上に跨がり叫んだヒロ。
『前みたいに満席だったらいけないから』って午前中から繰り出して、この後はどうすんだよ?
それに、いつにない程オシャレしちゃってさ、そんなにこの店に来たかったのかよ?
まっ 流行りのカフェでお茶したい、なんてヒロも一応は女子なんだな……。
心なしか、いつもより柔らかな表情のヒロの横顔を眺めていたら、思いだしたことがあった。
思いきって訊いてみようか……。