初恋の向こう側
「なぁ ヒロ、ちょっと訊いていい?」
「なに?」
中庭を眺めていたヒロが俺を見る。
「三年の成沢とヒロが付き合ってるとか、その、付き合ってないとか……そんな噂を小耳に挟んだんだけどさ……」
訊ねるとヒロは、また視線を戻しポツリと言った。
「ふーん。そうなんだー」
肯定でも否定でもないその返事を、どう取ればいいんだ?
何て返そうか迷っていると、そんな俺を見透かしたようにヒロが続けた。
「あたしね…」
「ん?」
「あたし、愛のないセックスはしたくないの」
「えっ」
ギョッとした。
何なんだよ、いきなり?
しかも、隣のテーブルのオバちゃんまでビックリ顔でこっちを見てるし。
「へ……。
えっと……何だっけ?」
「だからっ! あたしは愛のないセック ──」
「あ゙ーっ!! そ、それは聞こえたからっ」
慌てて止めた。