初恋の向こう側
「そんで成沢ー、前に目つけてたあの一年も食っちゃったの?」
「あ~、美脚とか言ってた?」
「美乳じゃなくて?」
「巨乳だろ?」
ゲラゲラと笑いあう下品な声に、オクターブ低い声が入りこんだ。
「どの一年のことだよ?」
「どの一年ってオマエ、食い過ぎだって!
あの陸上部の女のことだよ。成沢にしたらエッラい時間かかってたじゃん?」
そのタイミングで、俺達のテーブルに注文していた飲み物が置かれた。
俺の前にはダブルエスプレッソ、ヒロは抹茶ラテ。
「カラダもだけど顔も結構イケてたよな?
で、あっちの方はどうだったんだよ?」
聞きたくもない会話の続きが流れてくる。
「それが、いざという時になったら守りに入りやがって。話になんねーの」
「じゃあヤッてねーの?」
「ヤってねーよ。あそこまで抵抗されたら燃えるどころか萎えちまうって。
いい体してたって有効活用しねーんじゃ、あーいうの“宝の持ち腐れ”って言うんじゃね?」
ククッと笑った低い声。
「じゃ、あれは? 二年の…」
湯気の向こうのヒロを見ると、表情のない顔で中庭に視線を落としていた。