初恋の向こう側
……やっちまったよ ──
呆然と言葉を失うしかなかった。
だけどヒロは、静まった辺りの空気に臆することなく言ったんだ。
「“いざという時になったら”なんて、仲間の前じゃ随分と誇張してくれるもんね?
一緒に帰ろ~とかデートしよ~って毎日しつこくて……散々付きまとった挙句、公園の茂みに無理矢理連れ込もうとしたのは何処の誰よ?」
「アンタこそダレなのよ !?」
ゼブラ女が怒鳴るがヒロは構いもしない。
「あんた、自分ではモテてるって思ってるかもしれないけど、それってとんでもない勘違なの、わかってる?
ねぇ、自分が影でなんて呼ばれてるか知らないでしょ? せっかくだから教えてあげる。
“万年発情期”……それから、そうそう“歩く生殖器”ってのもあったかな。
あたしだったら、恥ずかしくて外歩けないけど」
引きつった顔の成沢の口から「…っつ」という声が漏れ、嘲笑うようにヒロが付け足した。
「もうひとつ、思いだした!
“ミクロサイズ”っていうの、意味わかるよね?」
成沢の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。
そんな奴を鼻で笑い、俺を見上げたヒロが言った。
「行こ? 梓真」