初恋の向こう側
「だって梓真、去年はあんなムキになってたのに」
「何がだよ?
あの時、ムキになってたのはヒロの方だろ」
サッカーに出るって決めたのは、小野崎を意識しての選択だったと自覚している。
種目と同じ部に所属する者は出場できない、というのが球技大会の決まり。
つまり、サッカー部員はサッカーには出られない! ということだ。
だから、小野崎と一緒に試合に出ることはないんだけどね。残念ながら……。
小野崎は、初めて話したあの放課後の後も、何度か俺にケンカを売ってきた。
アイツは、俺がサッカーを辞めた理由を知らないらしい。
だから、こんなことを抜かしやがったんだ。
『練習についていけなかったからだろ?』なんて。
自分で言うのもなんだけど、 俺ってこの辺りでは、そこそこ有名人だった筈なのに……。
まっ そんなこと、どうでもいいけど。
それよりアイツは、どうもまだヒロの事を諦めていないらしい。