初恋の向こう側


ベッドの上で目を覚ました時、そこが保健室だと理解するまで少し時間がかかった。

部屋の中は静まりかえっていて、他に誰もいないようだった。

二、三度、瞬きを繰り返す。


あの時、ヘディングしようとジャンプした俺の胸に、相手チームの誰かの頭が飛び込んできたんだ。

多分、競り合おうとしたんだろうけど、この俺を相手にそんな無茶なことは止めてもらいたい。


窓の向こうから声が聞こえる。

そういや、俺たちの試合はどうなったんだろう?

まだ、なんとなくボヤケた頭でそんな事を思った、その時だった。

ガラガラと扉が開く音がして、ペタペタと上履きの軽い音が近づき、ベッドを囲む薄いカーテンが揺れたんだ。

そして。


「…ヒロ ─」


いつになく固い表情をしたヒロが、真っ直ぐに俺を見下ろし立っていた。


「……大丈夫なの梓真?」


少し声が震えている。

ヒロの首筋に滴る汗が、窓から差し込む光に反射した。


「平気みたい、だけど?」


わざとらしいくらいに、ニカっと歯を見せて笑ってやった。

それなのに、どうしたんだよ?
そんな真剣な目しちゃって ──


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