初恋の向こう側

でもヒロは、ただコクリと頷いたんだ。

だからこっちまで調子が狂って、次の言葉が出てこない。

二人の間に未体験の空気が流れ、目を合わせたまま動けずにいる俺達を沈黙が包んだ。

でも何故だろう……?

その静けさに反するように、胸の鼓動が高まっていくのを感じている。


目に映るのは、ヒロの汗ばんだ肌と半開きになった唇。

それからTシャツの布地越しに見る、胸のカーブがウェーブする様子 ──


……なんなんだよ?


胸ん中がモヤモヤする。
口が渇いて、手の平が熱い。

コントロールの効かない胸騒ぎに苛立ってしまいそうだ。


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