初恋の向こう側
その時また扉が開き、入ってきたのは保健医だった。
「あら、目覚めた?」
俺とヒロの間に今度は、可笑しな空気が漂う。
気まずくてどうしようもなくて、意識をすると自然と視線が泳いだ、互いに。
そんな空気を払拭するように俺は声を発した。
「先生、もしかして俺って気絶しちゃってたの?」
「そうよ。軽ーい脳震盪ね」
……脳しんとう?
「けど、衝突したのってここだよ?」
と自分の胸を叩いてみせた。
「それで頭から地面に落ちたのよ。
今、担任の先生がいらっしゃるから病院に行ってらっしゃい」
病院って、そんな大袈裟な。
「でも、何ともないみたいだけど?」
「念のためよ。えっと……椎名さん?」
「はい」
「悪いけど、あなたも付き添って行ってくれないかしら」