初恋の向こう側

リビングのソファに座っていたら、奥の部屋からハンガーを持ったヒロが出てきた。


「ねぇ、制服だして?」


目の前に掌が差し出された。


「制服?」

「そのままじゃ、皺になっちゃうでしょ?」


鞄に詰め込んだままの制服を取り出すと、受け取ったヒロが慣れた手付きでハンガーに掛ける。

細い指が、ワイシャツの袖に硬い骨を通していく。

その様子をヒロの肩越しに眺めていた。綺麗な手だな、なんて思いながら。

色白でなめらかそうな肌、細く長い指……。

指先が少し荒れているのは、家事をこなしてるせいかな。

視線を移動させると、後ろ髪の隙間から白いうなじが見えた。

自然とそのまま体のラインをなぞりだす。

細い腕、腰の窪み。スカートの膨らみ、そこから伸びる太腿。

舐めるように爪先まで這って、折り返す。

足を伝いスカートをよじ登り、腰から背中を這わせると ── ブラウスの下に、薄いブルーの線が透けていた。


ドクドク、ドクッ

と体中へ溢れだす、熱い何か。


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