初恋の向こう側
興奮し始めた本能を僅かな理性が押さえ付けようとするが、追撃は止まらない。
細い肩を越え更に覗き込み、胸の丘を滑り降りようとした時、三つ程ボタンが開け放たれたブラウスの襟元の奥に目が止まった。
背中に透けているのと同色のレース。
そしてそこから溢れている、大きく柔らかな果実 ──
しっとりと掌が汗ばんでいる事に気づき、同時に脳裏によみがえる、あの日見た光景。
腰から上は何も身につけていないあの姿と、目の前にいるヒロが重なって ──
……体が熱かった。
湧き出し沸騰して心臓まで到達した何かが、なおも鼓動を高鳴らせる。
咄嗟にヒロが持っているシャツに手を伸ばし、もぎ取るように奪った。
「やっぱ、帰るよ」
「どうしたのよ、急に?」
ヒロが訝しげに俺を見る。
「いやっ……ちょっと、やんなきゃいけないこと思いだして」
目を逸らし下手な嘘を吐いて、逃げるようにヒロの家を飛びだした。
あのまま一緒にいるのは危険だと思った。
相手はヒロだぞ? 有り得ないって……けど自信はない。
家に戻りベッドに倒れこんた後も、燃焼できない感情を持て余していたんだ。