初恋の向こう側
嫉妬
八月に入り、暑さが一段と増した。
バイトを終えた俺は、裏路地を抜け大通りへ向かった。
バス停脇のベンチに腰を下ろした時、隣の停留所に一台のバスが入ってきた。
停車したそこから下車してくる人々。その一番最後尾がヒロだった。
俺を見つけるとニコッと微笑み、歩いてくるヒロ。
制服の襟を摘まんで扇いでいる。
栗色をした髪が肩のすぐ下で揺れ、きびきびと動く太腿がスカートを波打たせていた。
「………」
ほんの数十メートルしかない、二人の距離。
そこを歩いてくる様子を、まるでスローモーションで見ているかのように ── 見惚れていたんだ。