初恋の向こう側
「バイトの帰り?」
隣に座ったヒロが言った。
「うん。ヒロは見舞いの帰り?」
「うん。暑いねぇ?」
そしてまた、襟を摘まんだその手が揺れる。
「ホント暑いよなー。
どっかで冷たいモンでも食べてから帰る?」
珍しく俺から誘ってみた。
そしたら
「うーん……でも汗かいたから早く帰ってシャワー浴びたいかも」
って返ってきたから
「じゃあさ、シャワーも使える場所で休憩してく?」
なんて、ふざけてみた。
すると
「あたしと梓真の間で、そういう冗談はやめてよね?」
ってヒロが俺を睨んだ。
「そっか」
「そうだよ。
あたし達は、そんなんじゃないでしょ?」
そうだよな。
俺等の関係は、再会しても成長しても変わりはなく。
”そんなんじゃない” ……ただの幼なじみ。