初恋の向こう側
ダッシュで着替え、転げ落ちそうな勢いで階段を駆け降りる。
そして尋ねた。
「あのさ、隣っていつ越して来たの?」
「アンタね、起きてきたんなら『おはよう』くらい言いなさいよ?」
料理中の母さんが、背中を向けたまま言った。
「あっ おはよ。んで?」
「んで? って何?」
「だから隣の人だよ。どんな人?」
「はぁ?」
なんだよ? じれったいなぁー。
「だからー、」
と言いかけたところで、菜箸を握った手に制止された。
そして、こう返された。
「あんた、まだ顔合わせてないの?」