初恋の向こう側
「そういや祭りはどうすんだよ? オサ達と一緒に行くんだろ?」
「う~ん。どうしよっかなぁー」
なんて、本当は楽しみなくせに。
相変わらず素直じゃないっつーか。
きっとヒロのこういうとこは、ずっと変わりないんだろうけど……。
そんな事を思いながら、機嫌良さ気な横顔を眺めていた、その時。
俺達が歩く歩道に寄せて、一台の車が停まった。
黒いステーションワゴンの助手席の窓がゆっくりと下りる。
「茉紘ちゃん……?」
サングラスをした運転席の男が、助手席側に身を乗りだして言った。
「……センセ…?」
小さく呟いたヒロ。
そして、サングラスを外した男の顔を確認したヒロの表情が一気に緩んだ。
「やっぱり茉紘ちゃんだ」
「先生ーっ!」
それは、大学生風のイケメン。
海で焼きましたって感じの肌に、真っ白な歯が目立っていた。