初恋の向こう側
「ヒロー、先行ってるぞ?」
助手席のドアの横に立ち、楽しげに話すヒロ。
声を掛けたのに気づきもしない。
……ったく。
仕様がなく歩きだすと、後ろで「いいの?」って男の声がして、それに対してヒロが「いいの、いいの」と答えるのが聞こえた。
「……─ っ」
何なんだよっ、今のは?
『ごめんね、先に行ってて?』ぐらい言えないのかよ!
あー、やってらんね。帰ろっ。
荒い溜め息を吐いて、俺は一人歩きだした。
「それにしても暑すぎだって ─」
この夏の暑さを伝えるニュースが、連日テレビから流されている。
熱中症で何人倒れたとか、何十年ぶりに最高気温を更新しただとか……。
俺のこのどうしよう苛立ちも、クソ暑さのせいだろう。
おそらく多分……きっと ──