初恋の向こう側
「椎名も呼べばいいじゃん?」
オサがベッドに腰を沈める。
「何で?」
「だって、せっかく部活休みなんだし。夏休み中の真昼間に集まれる日ってないだろ? 後から愛莉も来るだろうし」
……と言われても、さ。
「夏祭り、俺等と一緒に行くんだろ? その話もあるじゃん。
おい、アズマ! 聞いてんのかよ?」
オサに促され、仕様がなく携帯に手を伸ばす。
ヒロ宛てのメールを打ち始めると、オサが横から口を出してきた。
「直でかけた方が話早くね?」
「そうだけど。
……客が来てるみたいだから」
「あーさっきの。まだ居んのかな?」
と、窓から外を覗こうとするオサ。
「男の車っぽかったけど親戚かなんかかな?
なーアズマだったら幼なじみだから知って ──」
「知らねーよ!」
自分でも驚くようなデカい声を張り上げてしまった。
「何いきなりキレてんだよっ?」
別にキレてなんてない。
そんなワケはない。キレるような理由なんて無いんだから。
でも明らかに動揺はしてたんだ。
どうしてなのかはわかんないけど……。