初恋の向こう側
「またかよ」
ヒロん家の前、街灯を浴びた一台の車が停まっている。
毎週水曜の夜になると現れる、黒いステーションワゴン。
進路ガイダンスがあった日の後、もう三度も確認している。
ヒロの親父さんは、毎日残業続きで帰りが遅い。
ということは、つまり家の中には……ヒロと、あの大学生風のイケメン野郎の二人っきりってことか?
“先生” なんて呼んでいたけど誰だよ?
とても中学の時の教師になんて見えなかったよな。
向かいの窓を眺めても、閉じられているカーテンの向こう側の様子は伺えるはずもない。
そのとき。
コンコンと誰かが俺の部屋のドアをノックした。