初恋の向こう側


次の日。


「家庭教師だって」


電話の向こうで愛莉が言った。


「カテイキョウシ?」

「高校受験の時のカキョーでね、神大の3年だって。夏休みが終わるまで週一でまた勉強見てもらうことにしたって言ってたよ」


それで“先生”なんて呼んでたわけか……。


「ねぇ梓真、そんなに気になってたの?」

「 ── っ。
べっ 別にそんなんじゃないって」


たいして気にしてたわけじゃないけどさ。ただ……。

愛莉のクスっと笑った声が聞こえた。


「ところで夏祭りのことなんだけど、茉紘とは話した?」

「いや、俺からは話してないよ。ヒロにはオサが連絡するって言ってたし」

「そうなの?
茉紘がね行きたくないようなこと言ってたのね。理由を訊いてもごまかすっていうか……梓真、何か心あたりない?」

「いや特にないけど」


話しながら昨夜のことを思いだしていた。

正直、ヒロのあの素っ気ない態度が気になっていたんだ。

ここ最近は俺の部屋へも来てないし、なんだかおかしいというのは感じていた。


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