初恋の向こう側
でも何だかモヤモヤするのは何故だ?
ヒロが俺の知らない過去を持ち、知らないところで誰かを好きになってたとしたら ──
腑に落ちない?
いや、なんつーか……ムカつく?
って、それはないだろ。
うまくは言えない。言葉にできない妙な感情。
気になるのだけは、確かなこと。
それから ──
少しだけイラっとしてムシャクシャして。
ホントにほんのちょっとだけだけど。そうちょっとだけ、多分。
「クソッ」
力任せに投げつけたマンガ本が、壁に当たり足の上に落下した。
「痛ってぇーっ!!」
なんだっていうんだ。
別にいいだろ。俺がとやかく言うことじゃないって。
けど、消すことも燃やしつくすこともできない、正体のわからないおかしな気持ちをただ持て余すしかなかったんだ。