初恋の向こう側
「夏祭りに行かないっていうのも、そういうワケだ?」
「そういうわけって、どういう意味よ?」
二つの目が俺を射るように見た。
「他に行く相手がいるなら、愛莉にも誤魔化さないでそのまま言えばいいじゃん?」
黒い濁りを増しながら膨れ上がっていく塊が、大きさを増し俺を苦しめる。
「勝手に決めつけないでくれる?」
「だって図星だろ?」
「バカじゃないの」
狭い場所に閉じ込められてるのはゴメンだと、今にも弾け飛びそうになってる塊。
「どうせ俺はバカで、ガキだよっ」
「ガキ、ね……。
そうかもね、誰かさんと違って温人君は大人かも」
久しぶりに会ったときは先生って呼んでたくせに、もうちゃっかり名前で呼んでるんじゃん。
「よくわかったよ。
祭りの件は愛莉にも伝えておく。ヒロは俺等と行く気ゼロだからって」
「そうしてくれる?
よく考えたら付き合ってるあの二人はわかるけど、あたしと梓真が一緒に行くのっておかしいかも。だからそれでいいんじゃないかな?」
もとから強気で勝ち気なヒロ。
それせいだけじゃない。俺を見た瞳はめいっぱいの怒りを含んでいる。
俺にもそんな目を向けるんだ、って思った。